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| - カテゴリ/発売日
- 本/2014-03-31
- 感想 98点
- 1988年に発売されて以来、絶版となっていたサプリメント「クトゥルフ・バイ・ガスライト」の復刻版。
1890年代のイギリスを舞台として遊ぶための追加ルール及び設定資料が掲載されている他、3本のシナリオを収録している。
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筆者は歴史に疎いのであまり詳しくは語れないが、1890年代のイギリスと言えばヴィクトリア朝時代。
あの天才探偵、シャーロック・ホームズが活躍していた舞台と説明すればピンと来る人も多いのではなかろうか。
深い霧の中にガス灯のおぼろげな光がポツポツと浮かび、
上流階級は夜な夜な社交クラブに通い、労働者たちは黒煙の立ち込める工場で奴隷のように働かされている……
そんな退廃的な世界観に魅力を感じるのであれば、本書を手に手に入れてみる価値は十分にあるだろう。
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さて、そろそろ肝心の内容に触れよう。
まず本書はクトゥルフのサプリメントらしく、その内容のほとんどは「世界観を構築するための設定資料」が占める。
当時のロンドンの地図やら労働者の服飾例、生活様式などが分かりやすく掲載されており、読み物としての面白さも十分。
ただ、この手のサプリメントを導入する際に付きまとうのが「キーパーとプレイヤーの認識の差」だ。
「シャーロック・ホームズ」と言われてピンと来ない人間をヴィクトリア朝時代のロンドンにぶち込んだって面白くないだろうし、やはり面白くプレイするには双方が世界観に対してある程度の知識を持っている必要がある。
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シナリオは導入向けの短編(と言っても基本ルルブよりずっと重い)が2本と、シャーロック・ホームズ一行と難解な謎に挑む「ヨークシャーの怪事件」が収録されている。
筆者が本書に唯一不満なのはこの収録シナリオだ。
短編2本はあまりにも情報量が多い上に真相に行き着くのが難しく、よほど腕の立つキーパーとプレイヤーでなければ満足行く結果は得られないだろう。
双方ともプレイヤーを世界観に嵌らせるのに適しているだけに残念。
ヨークシャーの怪事件に関してはハッキリ言ってしまうと駄作だ。
本書を購入した人間のうち、一体何人が「シャーロック・ホームズと邪神に立ち向かいたい」などと思うだろうか?
筆者からすると、こんな作者のオナティッシュみたいなものに30ページ強も省いているのが勿体無くて仕方がない。(2015-03-13)
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