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存在と時間〈上〉 (ちくま学芸文庫)


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カテゴリ/発売日
本/1994-06-01
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Nacoruru♡ 98 (2014-11-19)
一度なりとも『存在と時間』を原典でひもといたことのあるものは、細谷氏のこの訳業がいかに細心の気配りと苦心をもってなされているかを随所にうかがうことになろう。たしかにわが国ではこれまで幾種もの翻訳が試みられて来てはいる。だがそれらは、多く原文のドイツ語をいかに忠実に日本語に直訳するかに努力が注がれた。もちろんそれ自体は尊敬すべき誠実な態度である。だが、原文と突合せることを理解の条件とすることが、真の「翻訳」といえるだろうか。筆者には正直いって、いまこのそれ自体<哲学的>な問題に答えを示す準備はない。しかしひとつ次のことはたしかであろう。すなわち細谷氏のこの仕事は、もしあるとするなら唯一可能な、日本語のみによって『存在と時間』を理解する道を開いた、ということである。筆者には、今後こうした試みが、細谷氏のこの仕事で果たした水準で現れるのを創造すらできない。その意味でこの訳業は不滅であり、それが文庫本として安価に入手できる現在、ハイデガー哲学に関心をもつ全ての者にとっての幸福を祝う能天気に恥じるつもりはない。


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2017-08-12 18:07:16